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グラウンドのすぐ側にある、外の部活の部室棟。その脇にある青いベンチに、彼女は座っていた。
「あの……!」
俺が声を掛けると、彼女は顔を上げて俺を見た。そして、その大きくて吸い込まれそうな瞳を見て、思わず息を飲む。
綺麗だ。ほんと、綺麗、だな…………。
……って!そんなこと考えてても仕方ないじゃないか!!えーっと、俺が言わなきゃいけないことは…………。
「あの、私に何か用ですか?」
「えっ、い、いや、その…………」
よくよく考えたら、彼女に何を言いたいのか、そもそも、俺は何をしにここに来たのか、何も分からなかった。ただ、彼女が暑い中1人でいるのが心配で……飛び出してきてしまっただけだ。
うう、何を話せばいいんだろう。これじゃ俺、変なヤツだよ……。
自分の無計画さを恨めしく思っていると、彼女は少し微笑んで、俺の手を引いた。
「えっ……?」
「立ってたら疲れちゃいますから、座ったらどうですか?」
「あ、ああ…………そう、ですね」
俺は彼女に促されるがままに、ベンチに腰を下ろす。太陽に照らされていたベンチは、やっぱり少し熱かった。
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