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「普段は周りに気を配れる奴なんだが、試合になると視野が狭くなるのがネックだよなぁ。まぁ、これから経験を重ねていけばいいんだがな。あいつ、きっと伸びるから」
監督はそう笑って、再び真剣な顔で試合を見る。
……監督、聖夜のこと、よく考えてるんだな。きっと伸びるって言えるのも、聖夜のことを信じてるから。
……ううん。聖夜だけじゃない。監督は、選手みんなのことをよく見てる。選手のために、頑張ってるんだ。
そして、選手のみんなもそう。1人1人が、チームのために自分の役割を一生懸命熟してる。マネージャーの三上さんだって、そう。
なら、私は?
みんなの頑張りを見ていて、ふと自分に立ち返った時……いつも胸を占めていた、暗い感情が波打ち始める。
私は…………誰のために、生きているんだろう。どこでなら……私は、自然に息ができるようになるんだろう。
ずしりと重い感情に、足を取られて動けなくなる。暗い暗い自分の内側に、囚われていく……。
ピー!ピー!ピーー!!
試合終了のホイッスルが聞こえて、私は我に返った。選手達が、ベンチに戻ってくる。それぞれが休憩に入る中、真っ先に私の所へ来てくれたのは、聖夜だった。
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