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鍵を返して、用事も済んだ私たちは、2人揃って帰路についた。
夕日に照らされる河川敷。その上の道路を、2人揃って歩く。
「はー、今日も部活、楽しかったなぁ。旭はどうだった?」
「私は……まだ慣れてないから少し大変だったけど、他の部員の人や監督と話せて、楽しかった……かな」
「そっか。よかった!」
聖夜は明るく笑うと、ふと、河川敷の原っぱに目をやった。
「俺、小さい頃さ、よくここでボール蹴ってたんだ。父さんと一緒に」
「お父さん、と……?」
「うん。父さん、仕事で忙しいのにさ、よく俺や妹の相手してくれてた。ほんとに優しくて、大好きだったんだ。だから……父さんの単身赴任が決まった後、俺、悲しくてずっと泣いてたよ」
「そうなんだ……じゃあ、今は妹さんとお母さんと暮らしてるの?」
私が尋ねると、聖夜の口から出たのは、切ない言葉だった。
「ううん。俺の母さん、もう亡くなってるんだ。俺と妹が5歳の頃、病気で……」
っ…………そう、なんだ。聖夜も、お母さんと離れ離れなんだ……。
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