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夕焼け空も暗くなってきていて、星が見え始めていた。そろそろ帰らないと、みんな心配しちゃう、かな。……そんなことないか。
そんなことを考えて下を向く私に、聖夜が優しく声を掛ける。
「旭、手、出して」
「手……?」
私が手を出すと、聖夜が手渡してくれたのは……半分こにしたぴょん助君まん。
「え……いいの?」
「うん!1人で食べるより、2人で食べた方が美味しいだろ。一緒に食べよう?」
聖夜はそう言って、にぃっと笑う。
ご飯前だけど、夕飯が食べられなくなっちゃうかもしれないけど…………今は、聖夜と一緒に、これが食べたい。聖夜の優しさに応えたい。そう思って、私はぴょん助君まんをひと口食べた。
「……美味しい」
「うん!ほんとだな。白餡、久しぶりに食べたけど美味しいや。旭も甘いもの好き?」
「うん。甘いもの、好きだよ。でも……」
この餡饅が美味しいと思えるのは、それだけが理由じゃない。きっと。
「でも?」
「ふふっ、なんでもない」
「そ、そっか……?」
聖夜は不思議そうな顔をしながら、餡饅を食べ進める。その隣で、私も餡饅を食べる。ゆっくり、よく噛んで。この時間が、少しでも長く続くように。
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