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……不思議だな。さっきまで、あんなに悲しかったのに。あっ、もしかしたら……この子、魔法使いなのかも!
「ねぇ、どんな魔法を使ったの?」
「え?」
「俺、さっきまであんなに悲しかったのに……もう、胸が痛くないんだ。ねぇ、俺に何の魔法かけたの?」
俺が尋ねると、女の子はきょとんとしていたけど……やがて、クスリと笑って
「さっき唱えた魔法の言葉、教えてあげるね」
と言うと、俺の頭を撫でた。
「痛いの痛いの飛んでいけ……この呪文を唱えるとね、痛いのが治って元気になるんだよ」
「痛いの痛いの飛んでいけ……?」
痛いの痛いの飛んでいけ……。痛いの痛いの飛んでいけ!
すごい……なんだか、心がポカポカしてきた!
「呪文唱えたら元気出てきたよ!君、すごいね!」
「ふふっ、ありがとう。辛くなったら、思い出してね」
「うん!……あっ、雨が止んだ!」
「あ、ほんとだね」
女の子は傘を閉じて、空を見上げた。俺も一緒になって空を見ると、雨雲が晴れて、日の光が差し込んできていた。
そして、やがて空に架かったのは……とっても綺麗な虹の橋。
「うわぁ……!綺麗だな……。ねぇ、これも君の魔法?」
俺が目を輝かせると、女の子は俺に優しく微笑んだ。その笑顔がお日様の光よりも眩しくて……目を奪われる。
なんだろう、この気持ち。これもこの子の魔法?
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