0 痛いの痛いの飛んでいけ[side 聖夜]

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 ……不思議だな。さっきまで、あんなに悲しかったのに。あっ、もしかしたら……この子、魔法使いなのかも! 「ねぇ、どんな魔法を使ったの?」 「え?」 「俺、さっきまであんなに悲しかったのに……もう、胸が痛くないんだ。ねぇ、俺に何の魔法かけたの?」  俺が尋ねると、女の子はきょとんとしていたけど……やがて、クスリと笑って 「さっき唱えた魔法の言葉、教えてあげるね」  と言うと、俺の頭を撫でた。 「痛いの痛いの飛んでいけ……この呪文を唱えるとね、痛いのが治って元気になるんだよ」 「痛いの痛いの飛んでいけ……?」  痛いの痛いの飛んでいけ……。痛いの痛いの飛んでいけ!  すごい……なんだか、心がポカポカしてきた! 「呪文唱えたら元気出てきたよ!君、すごいね!」 「ふふっ、ありがとう。辛くなったら、思い出してね」 「うん!……あっ、雨が止んだ!」 「あ、ほんとだね」  女の子は傘を閉じて、空を見上げた。俺も一緒になって空を見ると、雨雲が晴れて、日の光が差し込んできていた。  そして、やがて空に架かったのは……とっても綺麗な虹の橋。 「うわぁ……!綺麗だな……。ねぇ、これも君の魔法?」  俺が目を輝かせると、女の子は俺に優しく微笑んだ。その笑顔がお日様の光よりも眩しくて……目を奪われる。  なんだろう、この気持ち。これもこの子の魔法?
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