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「あの……」
私が花琳さんの行動に驚いていると、今度は制服姿の男子生徒が私に声を掛けてきた。
冬の雪景色を思わせるような綺麗な銀髪と、整った顔立ち。そして、柔らかな雰囲気……。まるで、王子様みたい。
「音楽部です。部費の書類を提出しに来ました」
「あっ、は、はい!預かります!」
私が書類を受け取ると……彼は不思議そうにキョロキョロする。
「どうかしたんですか……?」
「いや……さっき、バドミントン部の子が居なかったかなって」
バドミントン部の……きっと、花琳さんのことだよね……。ど、どうしよう。教えるべきかな?
私が迷っていると、部屋の中から翔太君が出てきて、代わりに答えてくれた。
「さっきの先輩なら、もう戻りましたよ」
「そう。教えてくれてありがとう」
音楽部の彼は、そう言って柔和に微笑むと、生徒会室から立ち去っていった。すると、廊下が再び騒がしくなる。
さっきの人……一体何者?
「音楽部の人、帰りましたよ」
翔太君が花琳さんに声を掛けると、花琳さんは深くため息をついた。その顔は、ほんのり赤い。
「ありがとう……ごめんね、急に隠れちゃって」
「いえ、別に。……さっきの人、苦手なんですか?」
翔太君が尋ねると……花琳さんは慌てて首を横に振る。
「ち、違うの!苦手なんかじゃなくて……その…………」
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