7 銀色の旋律[side 花琳]

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 気づいたら、私は熱心にピアノに耳を傾けていた。流れるような低音と、キラキラ輝く雪のような高音。目に浮かぶのは、幻想的な銀色の世界──。  私は、彼がピアノを弾き終えるまで、その世界に入り込んでいた……。  ………………。  やがて、最後の一音が鳴りやみ、彼がピアノに向かって柔らかく微笑む。その微笑みすら、まるで物語の中の王子様のようで……私は見とれてしまっていた。  ……でも、次の瞬間、その微笑みが私に向けられたんだ。 「花琳。そんな所にいないで、こっちにおいで」 fe1804fe-d717-4145-93cc-f276cb151310 「っ~~~~!?」  驚きの余り、私は勢いよく扉を閉めてしまう。  い、いつから気づかれてたの!?もしかして、最初から……!?  は、恥ずかしすぎる~!!  し、しかも、あの笑顔…………美しすぎるよ~!!もう、心臓が飛び出しそう…………!  私が扉の前で胸を押さえてしゃがみ込んでいると、彼が扉を開けて私に合わせて姿勢を低くしてきたんだ。 「花琳、大丈夫?」 「ふわっ!?あわわわ……え、えっと……えっと!」 「落ち着いて。ほら、深呼吸、深呼吸」 「うっ、うん!すぅ~~~~…………」  ……って、何してるの私!!
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