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思わず胸を押さえて黙り込む俺を、旭が心配そうに覗き込む。
「聖夜、どうかした?大丈夫?」
「あっ、え、えっと…………胸が、ちょっと……」
「胸?痛いの?」
「分かんない。分かんない、けど……」
ドキドキする──。そう言った途端、大型トラックが通り過ぎた。
「ごめん、聞こえなかった……。聖夜、何て言ったの?」
「えっ……あ、えと……」
何故か分からないけど、このドキドキを伝えるのが、恥ずかしくて……俺は笑顔を作って誤魔化す。
「……大丈夫!心配かけてごめんな。もう平気だから」
「そ、そう?」
「うん!あ、ほら、青信号だ!早く渡ろう!」
俺はそう言って、横断歩道を走って渡る。
「あ、待って!」
旭も、俺を追いかけてパタパタと走ってくる。
横断歩道を渡り終えて、再び並んで歩く俺たち。旭が部活を始めてから、ずっと一緒に帰ってきた、いつも通りの道。
なのに……。
今日は何故か、この道がずっと続いていればいいのにって、思ってしまった…………。
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