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並んで歩いて、海辺の道に差し掛かった時だった。
「ねぇ、少し寄り道してもいい?」
旭が、珍しくそう提案してきたんだ。
「え?……別にいい、けど」
「ありがとう。少し、海……付き合って」
旭は、そう言って俺の手を引き……海に続く階段を駆け下りていく。
「…………やっぱり、夕日も海も、すごく綺麗」
旭はそう言って、夕焼けに照らされた海を見つめた。
「こう景色見てると、自分が抱えてるものが小さく感じるよね。私、その感覚が好きなんだ」
旭はそう笑って、海の方に歩いていく。俺も、手を引かれるがままに海に近づく。
「…………世界が全部、こんな風に綺麗だったらいいのに」
「え……?」
「ううん……なんでもない」
旭は首を横に振って、俺に微笑む。
「付き合わせてごめんね。どうしても、聖夜と……ここの夕日、見たかったんだ」
そう言う旭の笑顔が、あまりにも綺麗だったから……俺は、気づけなかった。
旭が、苦しんでいるってことに。
「……さて、そろそろ行こっか」
「あ、ああ……」
俺は旭に連れられて、再び通学路を歩き始めた…………。
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