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9 隠し事[side 旭]
「聖夜、送ってくれてありがとう」
私は自分の家の玄関の前で、彼に向かって微笑む。
「あ、うん!大丈夫……」
……今日の聖夜、少し何か考え事してるみたい。ちょっと、変な顔してる。私が年上だって分かったせいかも。あんまり、年齢のこととか気にして欲しくないんだけどな。
「聖夜、また月曜日……一緒に帰ろうね」
今まで通り、2人で笑い合いたいって気持ちを込めて、私はそう声を掛ける。
「……うん!もちろんだよ。また、来週な」
そう言う聖夜の表情は、いつも通りの笑顔だった。私が大好きな笑顔。私が勇気を貰えた笑顔……。
それを見て、自然と心が温かくなる。
「それじゃあな」
「うん。気をつけてね」
手を振って帰っていく聖夜を見送って……私は、ドアノブに手をかけた。
…………家に帰るの、気が重いな。
でも……帰らなきゃ。
私は意を決して、玄関に入る。
「ただいま……」
「旭姉様!お帰りなさい!」
玄関に入った途端、駆け寄ってきたのは……妹の茜。駆け寄ると同時に、ポニーテールにされた赤毛がゆったりと揺れた。私と同じ蜂蜜色の瞳で、彼女は私を見つめてくる。
「うん。……茜、ただいま」
「お母様が晩ご飯作ってくれてますよ」
「うん。荷物置いたら行くって、知江さんに伝えて」
私は茜にそう伝えて、荷物を置きに2階の自室に向かう。
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