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ドアを開けて、鞄を床に置くと……中から手帳を取り出して、表紙をめくった。すると、表紙の裏に貼られた、ぴょん助君のシールが目に入る。
……あの日、聖夜がくれたシール。聖夜が、私と仲良くなってくれた証。
聖夜…………。
彼の温かさを思い出したら、切なさと申し訳なさが込み上げて、涙が零れた。
っ……ごめん。ごめんね、聖夜。あなたは私と仲良くなってくれたけど、本当の私は…………。
「旭さん、部屋にいるのですか?」
ドア越しに声が聞こえて、私は慌てて涙を拭い、ドアを開ける。そこに居たのは、エプロン姿の知江さんだった。
知江さんは、私の顔を見るなり心配そうに顔をしかめる。
「旭さん……泣いていたの?」
「い、いえ!平気、です……」
「そう……」
知江さんは何か言いたげな顔をしていたけど……やがて頷いて、私に背を向ける。
「ご飯、出来てますから。下りてきてくださいね」
「はい…………」
スタスタと廊下を歩いていき、階段を下りていく知江さん。
彼女は、私の新しいお母さん。お医者さんで、綺麗な赤い髪をしていて、美人で、賢くて…………みんなが、知江さんを必要としている。お父さんも、そう。
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