9 隠し事[side 旭]

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 私が何も言えずにいると、柊さんが私に声を掛けてくれた。 「歩いてるところを、突然呼び止めちゃってごめんね。聖夜に悪気はないんだ」 「あ……うん。分かってる。大丈夫だよ」  私が笑顔を作って頷くと、柊さんは少し安心した顔をして……視線を聖夜に移す。 「聖夜ってさ、ちょっと向う見ずなところがあるけど、誰にでも優しい良いヤツなんだよ。生まれた時から一緒にいる私が言うんだから、間違いないんだからね」 「うん…………そう、だよね。聖夜は……優しいよね。私、分かってる……」  教室にいるのが苦しくて、1人で外にいた私の所に来てくれたのも、サッカー部に誘ってくれたのも、餡饅やシールを分けてくれたのも、家まで送ってくれたのも……全部、聖夜が優しいから。  その優しさが温かいのと同時に、家に帰る度に申し訳なさでいっぱいになる。  私は……そんな風に優しくされていい子なのかなって、思ってしまう。  その時の気持ちを思い出して、私が顔を曇らせると……それを見た柊さんが不安げな声で尋ねてきた。 「旭さんにとって……聖夜の優しさは、迷惑?」 「っ…………!そ、そんなことない!そんなことない、けど……私は…………」
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