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私は、私自身が好きになれないから。嫌いな人が優しくされて面白くないように、嫌いな自分が優しくされるのが……正しいとは思えなくて。
いつも、優しくされる度に嬉しくなって、喜んで……でも、家に帰ると家族を信頼できない自分がいて、その自分を見る度に、現実を突きつけられて、苦しくて…………。
「私は…………聖夜に優しくされていいほど、綺麗な人じゃない、から」
「っ…………」
私が絞り出すように吐いた言葉を、柊さんは首を振って否定する。
「…………そんなこと言わないで。聖夜は……そんな風に思わないから。旭さんが何を抱えていても……聖夜なら、全部受けいれて笑ってくれるよ」
柊さんはそう言うと、小さく微笑んだ。穏やかなのに……少し寂しそうな笑顔で。
「だから……聖夜のこと、信じてあげて。聖夜さ、あなたの笑顔が見たいだけだと思うの。その優しさ、受け入れてあげて」
「柊さん…………」
「聖夜があなたを大事にしてるように、あなたも聖夜が大事なんだよね?だから……聖夜のこと、あんなに笑顔にさせてあげられるんだよね……」
そう静かに喋ると、柊さんは私を真っ直ぐに見つめて、尋ねた。
「……1つだけ教えて。あなたにとって、聖夜は、何?」
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