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10 この恋を捨てる前に[side ホープ]
バスケ部の練習が終わったボクは、片付けを終わらせて部室を出た。すると、廊下の向こう側にある女子バスケ部の部室から、同じクラスの燕さんが出てくるのを見つけた。
燕さんはボクに気づくと、明るい笑顔で手を振ってくれる。
「ホープ君、お疲れ様!途中まで一緒に帰ろ!」
「あ、はい」
ボクはスポーツバッグを持ち直して、燕さんの方に駆け寄る。
燕さんは不思議な人だ。明るくて朗らかなのに、部活が始まると真剣な雰囲気になって近寄りがたくなる。美人な顔つきも相まって、威圧感がすごい。……今、目の前にいる燕さんは同一人物なんだろうか。ネットを隔てた向こう側で練習しているボクですら、そう思ってしまうくらいに。
「今日も暑いね。ホープ君、顔真っ赤だけど大丈夫?」
「あぁ……自分で言うのもなんですけど、色白だから仕方ないです。大丈夫」
「そっかぁ。いいな、色白美肌。私、この夏ですっかり日焼けしちゃったよ」
「あ、たしかに……4月よりも肌が小麦色になってますね。日焼け止め、塗りました?」
「塗ったよ~!塗った塗った!そりゃもう、たっぷりと!でもダメだった」
燕さんは、そう言うと明るく笑う。無邪気で、あどけない笑顔。みんなに愛されるべき笑顔だ。この笑顔を見ると、ボクは自然と落ち着ける。
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