1 君との出会いとサッカーボール[side 聖夜]

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 夏実姉ちゃんに言われて、俺はバタバタと準備をして……荷物の入ったリュックとスポーツバッグを持って、玄関に出た。 「行ってきまーす!」 「行ってきます」 「はーい、行ってらっしゃい!」  玄関で手を振る夏実姉ちゃんに笑顔を向けて、俺と柊は玄関を出る。すると、隣にある花屋の店舗前で、明子(あきこ)おばさんが掃き掃除をしていた。 「あら、聖夜君、柊ちゃん、もう行くの?」 「うん!俺は朝練で、柊は挨拶運動!」 「そうなの。気をつけて行ってらっしゃい!」 「うん!行ってきます!」  俺はおばさんに手を振って、フラワーショップ瀬野と書かれた看板に背を向ける。  ……おばさんと、夏実姉ちゃん。2人は俺と柊にとって義理の家族だ。俺たちが小学生だった頃、時空科学者の父さんが研究のために町を離れなくちゃいけなくなって……当時、既に母さんが亡くなっていたことと、頼れる親戚が居なかったことを理由に、昔から交流があった隣家の瀬野家に預けられたんだ。  本当は、父さんも俺たちを連れて行きたかったみたいなんだけど……研究の忙しさと、研究者寮に入ることが義務付けられていたこと、そして、その寮が家族で住むには窮屈すぎることを理由に断念。  小さい頃は、寂しくて寂しくて、よく泣いてたけど……父さんは俺と柊を育てるために頑張って稼いでるんだって分かってたから、なんとか我慢してきた。今では俺も、すっかり瀬野家にも馴染んで、穏やかな日々を送ってる。  
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