10 この恋を捨てる前に[side ホープ]

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「あっ、不服そうな顔!騙されたと思って食べてみなよ!絶対美味しいから!」 「……ふふっ。仕方ありませんね。でも、お金は自分で払いますから、燕さんも好きな物食べてください」  ボクがそう笑うと、燕さんは少しむくれていたけれど、やがて笑ってくれた。 「うん。ありがとう!」  ……燕さん、本当によく笑うな。ボクが笑顔にしてる……訳じゃないんだろうけど、それでも、話していて笑ってくれるのは嬉しい。ボクにも、人を笑顔にできるんだって思えるから。  でも…………。  ボクが1番笑顔にしたい人は、ボクじゃ笑顔にできないんだ。  ……どうしたら、旭を笑顔にできるんだろう。ボクは、天海家に来たっていうのに…………。  長年の悩みを思い出してモヤモヤとしているうちに、コンビニの前に着いた。  ……そして。  その前の光景に、ボクは動けなくなってしまう…………。 「旭…………」  旭が、男子に頭を撫でられている。相手の男子は本当に優しそうな顔をしていて、旭も……涙を拭って笑っていた──。 「っ…………なん、で」  何で、あの人の前では笑えるのに、ボクの前では笑ってくれないの……?やっぱり、ボクのこと、嫌いなの…………?  胸がズキリとして、視界がぼやける。その痛みを前にして、ボクは痛感してしまった。  長年抱いていた、旭への思いは…………紛れもなく、恋だって。
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