10 この恋を捨てる前に[side ホープ]

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 脳裏に、彼女に出会った時から今までの光景がフラッシュバックする。  日の光に当たると柔らかく光る、サラサラとした優しい茶髪。本当に綺麗だった。穏やかな蜂蜜色の瞳。でも、その瞳を細めて、ボクに心からの笑顔を見せてくれることはなかった。色白で、細く柔らかな腕。でも、その腕でボクを抱きしめてくれることはなかった。  なのに…………。  どれもこれもが、ボクは欲しくてたまらなかった。旭に、愛して欲しかった。ボクの前で、笑顔になって欲しかった…………。  ……でも、それすら、叶わないのか。 「…………はは」  ボクの口から乾いた声が漏れた。どうにかして、この苦しさを誤魔化そうとして出た笑い声。でも、心は楽になってくれない。  ここに、居たくないな。今すぐ、立ち去りたいな……そう思っていた矢先、燕さんに腕を引かれて、コンビニの裏に連れていかれた。 「燕さん…………?」  ボクが彼女の顔を覗き込むと、その顔に先程までの笑顔は無かった。 「…………聖夜、さん」  燕さんの口から、聞き覚えのある名前が零れ落ちる。 「聖夜さん……彼女、いたんだ…………」  燕さんの瞳に涙が溜まる。  その様子を見て、気づいてしまった。燕さんも、ボクと同じだってことに。
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