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11 嫌いじゃないと言えなくて[side 旭]
あの後、日が暮れるまで聖夜達と一緒に過ごした私は、まだ帰りたくない気持ちを堪えながら、聖夜に送って貰って家まで帰ってきた。
「旭、また明日な」
聖夜はそう言って優しく微笑む。その笑顔を見て、不意に思ったんだ。
私は、あと何回、聖夜と一緒に帰り道を歩けるのかなって…………。
「聖夜……」
「ん?」
──これからも、ずっと一緒に帰りたい。そう言おうとして、私は口を噤んだ。
これを言ったら、聖夜は困ってしまうかもしれない……そう思ったから。
だって、私は3年生で、聖夜は1年生だから。
進路のこともあるし、私の方が先に卒業だってしてしまう。それなのに、こんな気持ちを伝えたら……聖夜を縛ることになってしまう…………。
「……なんでもない。また、明日ね」
私は笑顔を作って、彼に背を向けた。
聖夜を縛りたくない。聖夜に迷惑を掛けたくない。彼はこんな私を大事な人だと言ってくれた。だから…………。
その言葉に相応しい人にならなきゃ。
この時の私は、そう思って焦ってしまっていたんだ。それが、自分を受け入れることへの邪魔になっているとも気づかずに…………。
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