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0 痛いの痛いの飛んでいけ[side 聖夜]
「父さんなんて、どこにでも行っちゃえばいいんだ!」
そう怒鳴って家を飛び出したのは、俺がまだ小学1年生だった頃。サーサーと降り注ぐ雨に濡れながら、俺は無我夢中で走った。
目が熱くなって、視界がぼやける。頬を伝う雫が雨なのか涙なのか、俺には分からなかった。
「はぁっ……はぁっ…………」
走っているうちに、呼吸が上がって……苦しくなった俺は、膝に手をついて息を整えようとする。
「はぁっ……はぁ…………うっ……うぅ……」
でも……深呼吸しようとしても、嗚咽が漏れて上手くいかない。
苦しい。悲しい。寂しい。辛い…………。
「っ…………。父さん、なんで俺たちを置いて行っちゃうの……?なんで、遠くでお仕事しなきゃいけないの……」
涙が止まらなくて、胸が痛くて、苦しくて……俺は、道の真ん中でしゃがみこんでしまった。
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