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翌日は部活がなく、その代わりに視聴覚室でミーティングがあった。
三年の先輩たちが引退となり、二年と一年の体制に変わる、その引継ぎ会のようなものだった。去年も同じミーティングが行われて、そのときは朝香先輩がキャプテンに指名された。
朝香先輩は、個人としても県選抜候補選手になるほどスキルが高く、みんなにも厳しい人だった。
私もしょっちゅう怒られてたけれど、いつのまにか「この人についていけばいいんだ」と思えるぐらいカリスマ性があった。それは部全体にも伝わっていき、創部史上初の県大会準優勝を成し遂げたのは朝香先輩がいたからこそと私は思う。
「私たちは引退するけど、みんなのことは三年全員が応援します。最初は大変だと思うけど、みんななら大丈夫だと私は思ってる。新しいバスケ部が、みんなの理想のチームになることを期待してます」
凛とした態度で朝香先輩は言った。
「理想のチーム」、それってどんなだろう。私がぼんやりと考えようとしていると、
「じゃあ、私から次のキャプテンを指名させてもらうね」
と朝香先輩が話し始めた。
普通にいけば二年で唯一スタメンだった奥井楓音が選ばれるのだろう。中学時代から有名なうまい子で、みんなを引っ張ってくれるんじゃないかな。朝香先輩に近いと思う。
本人はどう思っているのかな、となんとなく楓音を見ていたときだった。
「杉浦柚希」
私の名前が呼ばれた。朝香先輩の声だった。しまった、よそ見をしていたのが見つかった。そう思って慌てて私は前を向いた。
しかし、先輩は私に微笑みかけていた。
「キャプテンは柚希に任せたからね」
「は?」
全く予想もしていないことが起きると、人は言葉を発することを忘れてしまうらしい。
こうして私は、何の前触れもなく、バスケ部キャプテンになってしまった。
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