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「あの。もしかしてなんですけど?」
すると菊池が今度はこちらからと、落としていた視線を上げて白鳥を見上げる。
「オカルト研究部といいましたよね?つまり友ちゃんの?」
白鳥と菊池は互いに探るように見つめ合う。
「まぁ、そういうことになりますね。単刀直入にいえば、俺とこちらの黒羽さんは所謂、見える側の人間ということです。これだけで答えには充分ですよね?」
優しい微笑みの中でもじわじわと滲みでる圧に、再び怯んだように視線を落とす菊池。
「その何か心当たりがあればと思ったのよ。まぁでも、話を聞いてる限りじゃとても仲が睦まじかったようだから、辛いことを思い出させてしまうことになると思うわ。だから辛いなら無理しないで突っぱねてもらって構わないわ」
そんな様子を傍観していた黒羽が、菊池を気遣い助け舟を出す。
一瞬、隣の白鳥に鋭く睨む視線を送ることも忘れない。
「ごめんなさい。お役に立てることはありません。さっきも言った通り、再会したのは今年の春です。そして友ちゃんが亡くなったのもその一ヶ月後。再会からこの短い時間で、友ちゃんの変化に気づけませんでした」
「そう。そうよね。ごめんなさいね。ありがとう」
黒羽は菊池を慰めるように背中を優しく擦る。
「そうですか。貴重な時間をありがとうございました。でも最後にもうひとついいですか?」
「はい?」
「菊池さん以外に鎌田さんと親しかった人はご存知ですか?」
その白鳥の問いに一拍置いてから答える菊池。
「そう。ですね。壮くん。あ、いや、松林壮介という生徒は私と同じく幼なじみです。よく 3人で遊んでいましたから。でも、壮介くんに話を聞いても無駄だと思いますよ」
「無駄?ですか?」
「はい。それは行ってみれば分かると思いますから。彼は多分図書室で勉強をしていると思いますよ。いつもそうしているので。では、先輩方、南條さんも失礼します。そろそろ戻らないと相馬先輩にどやされてしまうので」
菊池は最後に自虐的に笑うとそそくさと空き教室へと戻っていく。
「どうするっすか?ああいってましたっすけど?」
「まあ、行くしかないでしょうね。他に取る手段がないわ」
「ですね」
三人は満場一致で次の目的地を図書室に決めて歩を進め始める。
その最後の最後まで白鳥は、菊池の消えたドアを目を細めるようにして見つめていた。
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