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図書室へ向かう道中、南條を先頭にその後ろを横並びに歩いていた黒羽と白鳥。
「あなたって意外とズケズケと物を言う人だったのね」
「そうですか?俺はこういう人間ですよ。黒羽さんは想像していた通り、お優しい方ですね」
「そういうとこよ。そうやってどんなに悪意を向けられようとも、好意を向けられようとも、飄々としているところ。相容れないわね」
「そうですか。それは残念です。でも、黒羽さんも俺に対しては中々踏み込んできてますけどね?」
「ほらそういうところよ」
そんな背後から聞こえる会話に耳を傾けていた南條は、会話に割り込む隙を見計らっては尻込みをしていた。
そんなこんなでたどり着いた図書室と書かれたプレートが掲げられた一室。
扉はまだ閉じているというのに、ピンと張りつめた空気が扉の隙間から滲み出ている。
「ところで南條さんは、松林さんはご存知ですか?顔を見たら分かります?さすがに図書室で大声で名前を呼ぶのは憚れるので」
そんな白鳥の配慮にポンと胸を叩く南條。
「お任せくださいっす!一年生の顔と名前はバッチリ把握しているっす!」
南條は胸を叩いた小さな拳を開いて扉の取っ手に指を掛ける。
「じゃあ開くっす!」
南條は二人の了承を聞く間も無く扉を開いた。
そして顔だけ入室させると、ぐるりと一面を見渡す。
その光景を怪訝そうに睨む図書委員。その図書委員に両手を合わせて謝罪のジェスチャーを送る白鳥。
「あ、見つけたっすよ」
その間に目的の人物を発見した南條は、声のトーンを落として二人を手招いた。
入り口付近の図書カウンター、その正面に縦3列、横4連に並ぶ長机。その奥にはズラッと本棚が壮観に立ち並んでいる。
そして松林はカウンターから見て、一番左後ろの隅に腰をかけ、黙々とノートに字列を刻んでいた。
「失礼しま~すっす」
南條は寝起きどっきりの如く声を殺して室内に侵入する。
その後を涼しい表情でついていく二人。
ゾロゾロと入室してきた三人に気を配るように注意深く観察する図書委員。
それに再び両手を合わせて応える白鳥。
そうして参考書と睨めっこ中の松林の元へ到着する三人。
その威圧感のある視線で見下ろす三人を、若干の怯えた表情を見上げる松林。
遠目から見れば因縁をつけられる下級生にも見えなくもない状況だ。
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