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ーーー全三十人の教室。縦に五つ、横に六つずつ並んだ机。
その廊下側から横に三つ目。その一番後ろに位置する席に座る男子生徒がいた。
彼の癖は人間観察で、よく周りの生徒の様子を伺っていた。
特に最近気になっているのは、窓際の一番隅に座る女子生徒だった。
彼女はいつも一人で、遠くを見るように一転を見つめていることが多い。
言葉数も少なくクールな印象をもたれる彼女だが、たまに小さく微笑むこともあった。
彼はその彼女、黒羽和に興味があったのだ。
しかし、それは友情や恋愛という観点のものではなく、似た者同士な雰囲気を掴みとったからだ。
そして今日もまた、授業中にも関わらず窓の外に視線を落とし、微動だにしない彼女を盗み見る男子生徒。
その視線の先が気になっていた。
そうこうしているうちに授業は終わり、学級委員が起立と号令する。
男子生徒はそれに従い椅子を引いて立ち上がる。
しかし教師の視線が一点にとどまり、困惑を浮かべた事で彼は視線の先を辿り彼女に辿りつく。
彼女は隣の席の女子生徒に指摘され、困惑で教室中を見渡し、隣席の生徒に話をかけた。
しかしそのすぐ後にその女子生徒の謝る声が響いたために、「何を言われたんだ?」や「かわいそう」や「あいつ呪われるぞ」なんて声がざわざわと広がっていく。
「ふぅ~。馬鹿らしいですね」
しかしそのざわめきの中でその少年だけはそう呆れ顔を浮かべていた。
授業後、そんな少年に近寄るニ人の女子生徒。
「深雪くん!これから遊びにいかない?」
「う~ん。ごめんなさい。これから予定があるので、また次回お願いします」
「あ~そっか!おっけ!じゃあ今度ね!楽しみにしてるよ!バイバイ!」
そう言い残し颯爽とニ人の女子生徒は去っていく。
「あーあ。白鳥折角モテてんのに勿体ねぇよな~」
「そんな。俺はモテてるとかじゃないと思いますよ」
「またそうやって謙遜しちゃってさ!そのイケメン無駄遣いすんなよ~」
女子生徒ととのやり取りを見ていた男子生徒が、彼に嫉妬の眼差しを残して教室を後にしていく。
そうして次々と教室を後にしていく生徒たちを見送る彼は、静まり返る教室でぐっと背伸びをする。
そして窓際に視線を移した。そこには彼以外にも一人だけ居残る女子生徒がいた。
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