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パタパタと廊下に響く軽い足音が、ニ人の居残る教室へ向かってくる。
「お待たせっす!!」
そしてその足音は前方の開け放たれたドアから室内へと入室してきたのはショートカットでいかにも活発な女子生徒だ。
「ああ、南條さんお疲れ様です」
「すいません先輩方!出てくるときに担任に掴まっちゃいまして、大した様でもないなら明日にして欲しかったっすよ!」
絵に描いたような後輩口調が特徴的な南條は、ニ人の絶妙な距離感に戸惑いつつ、近場の椅子を引いてニ人の丁度間に向き合う形で腰をかける。
「それで?早速本題に行ってもらいたいところなのだけれど、1つだけいいかしら?」
「はい!どうぞっす!」
「私が呼ばれたのはいいとして、なぜ彼がここにいるのかしら?居るということはそういうことでいいんでしょうね?」
「はいっす!おニ人は私の見込んだ素晴らしい人材なんすよ!」
南條は胸の前に両手で作った拳を掲げて目をキラキラとさせる。
「確か、黒羽さんは陰陽師の末裔にあたるらしいですよね?みんながそう噂していたのを覚えていますよ」
「まぁ。だからどうということはないのだけれど。そのお陰で、必要のない才能に芽生え、いえ、蝕まれてしまっているのよ。あなたも?そういう家系なのかしら?」
黒羽は前方にそっぽを向きながら質問を返す。
「いえいえ、俺の場合は家系とかなんでもなくて、まぁ物心ついたころにはってかんじですね」
「そう。それじゃあ、あなたも相当苦労したんじゃないかしら?」
「そうですね。それなりにはですね」
淡々と繰り広げられるキャッチボールに、それぞれの顔を見比べるように左右に首を振りながら様子を見つめる南條。
「お二人は意外にも仲良しさんなんすね」
「そう見えるかしら?だとしたら中々の鈍感力ね」
「仲良しかどうかは分かりませんが、まあ普通にお話はできますね」
「ふ~ん。そうなんすね。まぁ、仲が悪いよりはいいっすね!」
「それより本題に入ってもらえるかしら?」
「あ!そうでした、そうでした!」
南條はヴんんと喉を鳴らして調子を整えると、背筋を正して本題を話しはじめた。
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