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「まずはお二人は、鎌田友恵をご存知っすよね?」
黒羽は南條の問いに「ええ」と一言、白鳥は「はい」とひとつ頷いた。
「まぁそうっすよね。まだ2ヶ月と少し前の出来事っすからね」
鎌田友恵。三人と同じくこの創聖高校の通っていた女子生徒で、学年は黒羽と白鳥の一つ下、南條と同級の一年にあたる。
5月4日。屋上から飛び降りその生涯を終えた生徒だった。
その原因はいじめによるものと言われているが、学校側はその事実な無かったとして処理をし、結局は原因は解らず仕舞いだった。
「それでっすね。最近この学校内である噂が流れはじめているんです。その亡くなった友恵ちゃんが、丁度飛び降りた時間、だいたい六時限目の授業中っすね、窓の外を眺めていると、屋上から降ってくるそうっす。それもこちら側に顔を向けて、見ているものと目を合わせるように、そして何かを訴えるように。目の合った生徒は精神を止むとかないとか、そういう尾びれもついてしまったすけど」
南條は声をワントーン低くして、雰囲気を楽しむように怪談を終える。
「まぁ、よくある話しよね」
「無理もないですよ。まだ入学してから一ヶ月くらいでこんな事になってしまって、一年生の間では特に重く残り続けるんじゃないでしょうか?」
「そうね。そこから派生してこういう怪談と言うものは生まれるもの。実際に見えたのが彼女の霊でなくても、もっともな理由があればそう見えてしまうのもあり得ない話ではないわ」
「ふ~ん。黒羽さんは作り話だと、単なる噂だと言うんですね?」
「まだわからないわよそんなの。あなただって分かっているでしょ?」
「まぁ、それはそうですね」
そう冷静に会話を繰り返す二人を再び興味深そうに見比べる南條。
「やっぱりお二人は」
「ないわね」
「そうですね。仲良しとは言えませんかね」
「そうすっか」
南條の言葉を予測した二人に即答された南條はそれ以上は追及しない。
「それで南條さん。あなたは私たちにどうして欲しいと言うのかしら?」
南條はゴクリと生唾を飲むと口を開いた。
「お二人は霊感があると聞いてるっす。だから、友恵ちゃんの声を聞いて欲しいんっす。なぜ自ら命を絶ったのか?誰を怨むのか?それを聞いて欲しいっす!」
着席したまま膝に頭をつける勢いで頭を下げる南條。
黒羽はその姿を視界で捉えてふぅ~とひとつ息を吐く。
白鳥は少し目を細めて左口角をニヤリとあげた。
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