始まりのモノクロ

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ーーーー翌日から早速、黒羽と白鳥の調査が始まった。 まずは現場である屋上から、コンクリートの地面を見下ろしていた。 「凄いですよね。こうして眺めてみると、とても飛び降りる勇気なんて湧いてこないですよ」 「そうね。それほど私たちはまだこの世に留まるための活力を残しているということね。風前の灯火だとしても一生消えないその活力を」 「不安定な世界では、その蝋燭を保つのもやっとですからね。どこで踏み外してその蝋燭を倒してしまうか、恐る恐る俺たちは綱渡りをしているのかもしれませんね。だからこそ生きているということは神業にも近いことなのかもしれません」 「彼女は強風に揺らされたその綱でバランスを取れなかったということね。てか、その理屈だとこの世の人間みんな神に近い存在ということになるわね」 「かもしれませんね。そもそも神様は人が作り出したものです。神様の創造主である人間が神にもっと近いのは当然といえば当然かもしれないですね」 フェンスの手すりに手をかけて、夏風に吹かれた二人を背後からあっけらかんと見つめる南條。 「なんかお二人って不思議な人っすね」 「ん?俺がですか?まぁ、変人とはよく言われたものですが」 「奇遇ね私もよ。現在進行形でだけど」 「いや、そういつもりじゃないっすよ!もう、お二人は意地悪っす」 南條はプクッと頬を膨らますとそっぽを向いた。 「それよりどうっすか?その、友恵ちゃんの霊はここにいるんすか?」 そんな南條の言葉に2人はフェンスに背中を預けるようにして振り返ると、2人で顔を見合せてから代表するかのように黒羽が口を開いた。 「いや、ここにはいないわね」 「そうっすか。やっぱり噂は噂って事っすかね」 南條が小さく肩を落とした。 「ちゃんと聞いてた?と言ったのよ」 「え?それって?」 一転、南條の瞳はイキイキと輝く。 「では行きましょうか」 白鳥はそう言い残して率先して歩きだす。その後を何の迷いもなく黒羽も続く。 「え?え?行くってどこにっすか?ちょ、ちょっと待ってくださいっす先輩方!!」 小柄な南條はその2人の背中を小さな歩幅でパタパタと追いかけていった。
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