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「ここって」
そうしてたどり着いた場所で南條は空を見上げていた。
「そうです。鎌田さんが飛び降りて丁度落下した地点ですね」
南條は空から地面に視線を落とす。心なしかそこだけジメッと濡れているような感覚を覚えて南條は身震いをした。
一方黒羽は、その地面から垂直にそびえる校舎の壁を凝視している。
「あの………白鳥先輩。黒羽先輩は何をしてるっすか?」
「ん?ああ、鎌田さんですよ。鎌田さんと意志疎通を試みてるんです」
「ああ~そういうことっすか…………って!うぇぇぇええ!?」
「っぷ」
南條の情けないうわずった叫び声に思わず笑みを溢す白鳥。
「ちょ!笑わないで下さいっすよ!てか、なんでそんな冷静でいれるんすか?」
「う~ん。まぁ、俺らにとってはこれが日常だからですかね。南條さんもいちいちそこら辺の鳥とか、蝶々とかにいちいち興味を示さないですよね?まぁ、そういうことです」
「いや、そういうことですじゃないっす。その中でもまだレアの方じゃないっすか!?気になる存在じゃないっすか!?」
「う~ん。確かにそうかもしれませんね。じゃあアレですね。野良猫です。南條さんが野良猫を見つけたような感覚です」
「それならしっくりくる気がします。じゃないっすよ!え?野良猫感覚なんすか!?」
「まぁ、現世で迷い留まるという意味では、途方にくれた野良猫みたいなものですかね」
「なんか凄すぎて言葉にできないっすね」
南條は力なくへなへなと笑うと、二人の住む世界の違いに唖然とする。
そんな会話をしていると端からみれば壁を凝視していただけの黒羽が二人に向き直った。
「どうでしたか?」
白鳥の問いに黒羽は首を横に振った。
「ダメね。何を聞いてみても話してくれないわ。ただ…………」
黒羽はそこで口を閉ざし、南條と白鳥を交互に伺う。
「ああ。そうですね。まぁ、後はここにいても仕様がないので、足で稼ぐしかないですね」
黒羽の意を汲み取った白鳥は場を仕切るように柏を打つ。
「おっと、やってしまった。まぁ、悪い人ではないから大丈夫ですかね」
「ん?どうしたっすか?」
「こうやって手を打ち合わせると邪気を払うって言われてるんですよ」
「へぇ~そうなんすね~。勉強になるっす」
「まぁうっかり除霊とはならいと思うけど、気をつけなさいね」
「心得ております」
そんな黒羽と白鳥を見て、南條はやっぱり不思議な二人だと再認識していた。
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