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「とは言ったものの誰から話を聞きましょうか?南條さんは心当たりありませんか?鎌田さんとしこりがあった生徒に?」
一年生教室の並ぶ廊下の前で三人は立ち会議をしていた。
「と言われましても………。こういう密告みたいなのはほんとは嫌なんすけど、必要なことっすもんね。一人心当たりあるんすよ、多分部活中だと思うんっすけど」
「こっちです」と今度は南條が先頭を歩き二人をリードする。
一行が向かった先は、校庭まで響いていた音色の発生源でもある空き教室。
吹奏楽部がパート練習に使っているようで、中からクラリネットの音色がドアを振動させている。
三人は一度音色が止むのを待って空き教室のドアをノックした。
「は~い!」
中からの返答と同時にスッスッという足音がドアの近くまで来て止まる。
それとほぼ同時にドアが開かれ中かから現れたのは、ポニーテールをぶら下げた勝ち気な女子生徒、相馬小夜だった。相馬は黒羽と白鳥と同じくクラスの男女共に人気の高い生徒だ。
「あら?誰かと思えば珍しい組み合わせじゃん!深雪くんに、和ちゃんまで!何々?私になんか用だったり?」
予想外の来客にウキウキと小刻みに体を弾ませる相馬。
「お疲れ様です相馬さん。えっと、相馬さんに用って訳じゃないんです」
白鳥は目当ての人物を呼ぶように目線で南條を促す。
「えっと、菊池さんはいるっすか?」
そう言いつつ中の様子を覗くようにピョンピョンとその場で跳ねる南條。
「菊池ちゃん?うん。いるけど。おーい菊池ちゃん!お客さんだよー」
「はい!」
相馬の呼び掛けに元気よく返事を返したボブカットでふんわりとした雰囲気の女子生徒。
手に携えていたクラリネットを丁寧に机の上に敷いたタオルケットの上に置くと、小走りで4人の方へ駆け寄る。
「おお~菊池ちゃん部活中ごめんっす!」
南條は両手を合わせて謝罪の意を示す。
「ううん。大丈夫だよ。それよりどうしたの?えっと~…………」
菊池は南條との関係性を探るように、上級生の二人を一瞥する。
「ああ。こちらはね。我がオカルト研究部に体験入部してもらってるっす。白鳥先輩と黒羽先輩っす」
白鳥と黒羽は身に覚えのない文言にギロリと南條を睨むように見下ろす。
「オカルト研究部?」
その胡散臭いの部名を聞いた菊池もまた、眉間に皺を寄せて首を傾げた。
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