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しばらくして、ひとけが少なく古い扉の前へ来ると兵士が槍を持って立っていた。どこか焦燥した表情のふたりにレイヴァンが「中へ通してくれないか」と言えば、すんなりと中へ入ることに成功する。いままで、訪れたことのない部屋にマリアは、やや戸惑ったがレイヴァンに降ろされて、まだなれないヒールの靴で床の上に立ち、硝子ケースの中にあるものを覗き込んだ。薄暗い部屋の中で、天井にあるステンドグラスを通し射し込む月の光を反射して銀の鎖がかがやく。元は首飾りであったのだろうが、引きちぎられて無残な姿へと変貌していた。
「これはいったい……」
つぶやいたマリアの後ろでソロモンが眉間に皺を寄せる。
「これは正当なる王位継承者に贈られるものです。即位するまで身につけなくてはいけないもののはずですが」
こうなっては、身につけることもできないとソロモンが言えばとなりにいるレイヴァンも無言でうなづく。これでは、儀式を執り行うこともできないであろう。むしろ、この状態で儀式を執り行えば沽券に関わる。
「どうやら、姫様を継承者と認めたくない者がこの城の中にいるようです」
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