序章

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 ふたりを振り返りマリアが「そんな」と声をあげた。ソロモンは、顎をさすりながら黙り込む。いくつか、はかりごとをめぐらせているのだろう。レイヴァンも表情は晴れないままであるが「会場へ戻りましょう」とマリアに告げる。騎士らしく差し出された手をマリアは取りながら、表情を硬くしていた。  それから、廊下へと出るとソロモンは考えたいことがあると言い、部屋へ戻ってしまった。もとより夜会に出ることも嫌であった様子なので、もう戻ってくることもないだろう。 「マリア様、中庭へ出ませんか」  レイヴァンの申し出を受け入れることにした。正直、夜会に戻るのはつらく感じていたのだ。  手を引かれるまま中庭へ出ると冷たい風が頬を撫でる。身震いすれば漆黒のマントがマリアの肩にかけられた。 「着ていて下さい」  かすれた声で「ありがとう」とマリアはかえした。そのあと、レイヴァンに向き直り口をひらく。 「レイヴァンは、今回のことどう思う?」 「そうですね、マリア様が即位することをよく思わない者がいるのでしょう」
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