16人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前にいるのはレイヴァンであるはずなのに、どこか恐怖を覚えうろたえる。先ほどまで、黒い瞳にはやさしい光が宿っていたというのに、今は武器を持ち戦うときの瞳と同じで冷たい光を宿している。彼自身は気づいていないのだろうが、戦いとなると彼の瞳はひどく凍えて見える。瞳の色も彼自身も何一つ変わっていないのに、淡々と戦場を見つめる目は、どこかおそろしくマリアには感じていた。
「な、なにを……」
震える声でマリアは尋ねた。“姫”である自覚が足りないのだろうかとマリアが考えたとき、レイヴァンの瞳があやしくきらめいた。
「もちろん、女性であるという自覚ですよ」
日に焼けた無骨な手がマリアの頬にふれ、輪郭をなぞる。体をふるわせて、目をとじたマリアの首筋に舌を這わせた。あでやかな声が桜色の唇から漏れれば、レイヴァンはにやりとした。
「そんな声で俺を誘惑して、いけないお姫様ですね」
「違う!」
ささやかれた言葉にマリアがすかさず、否定したけれどレイヴァンの手が下へ下へと滑っていく。ドレスの上から腰をなでられ、魅惑的な声をあげてしまう。マリア自身も逆上せていくのを実感する。
最初のコメントを投稿しよう!