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申し出たジュリアにマリアは、かえすとレイヴァンを振り返って「戻ろう」と一言いえばレイヴァンは「はい」と答え、騎士らしくマリアの手を取ると夜会の会場へと戻っていった。
黒いマントをレイヴァンにかえし、会場の扉をくぐるとゆるやかな宮廷音楽がとまり、貴族達がざわめく声と男の怒りが孕んだ声がひびいていた。
「なんだと、おぬし、なんと言った?」
「ああ、何度でも言ってやるさ。お前は、領地の者から王によって決めらた税の倍を徴収しているそうじゃないか」
闇色のヒゲをたくわえた悪人面の貴族がいった。すると、先ほどさけんでいたやせた貴族は、こぶしを握り締めて感情を押し殺しながら口をひらく。
「いいえ、陛下。わたくしは、そのようなこと、行ってはおりませぬ」
血走った瞳を向けられれば、王が辟易しながらも「まあまあ、おちついて」と二人の間に入ってなだめる。とても、王の行動とは思えないが王らしいとだれもが思った。
「陛下、いったいいかがなさったのですか」
ひとつ溜息をついてから、レイヴァンが低い声で問いかけた。王は、ほっと息を吐きつつ、マリアとレイヴァンに駆け寄る。
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