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微笑みを浮かべているのに、腹の底まで見透かすような瞳にみすえられベルク公爵は冷や汗を浮かべつつ口をひらく。
「い、いいえ、何もいたしません」
「なら、良いのだけれど」
青い瞳がするどく光る。けれど、すぐにいつも暖かな眼差しへと変わり「さ、夜会を続けましょう」と言えば、会場にいる音楽団が音を奏で始めた。
「姫様、夜会は楽しんでおりますか」
ディアナの視線がマリアに変わって、明るい口調で問いかける。呆然としつつマリアが「ええ」と答えると、儚げな笑みを浮かべて「よかった」とつぶやきがかえってきた。
「ディアナ、助かった。一時はどうなることかと」
「お兄様、あなたがしっかりしなくては駄目ではないですか」
ディアナに返す言葉もないようで、王はうなだれてしまう。そんな王をよそにディアナは、再びマリアに笑顔を向けた。
「此度は姫様が正式に王位継承者となった宴です。楽しまなくてはいけませんわ。そうだ。せっかくですから、だれかと踊りませんか」
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