16人が本棚に入れています
本棚に追加
今まで男として生きてきた上、“姫”としての教育はまったく受けてこなかったマリアである。とうぜん、踊り方など知るはずがない。ダンスの腕よりも、剣の腕の方があきらかにまさっている。
「いや、わたしはかまわない。皆で楽しんでもらえれば」
マリアが答えると、いつの間にかディアナの後ろにいたリカルダが「何をおっしゃっていますの」と声をあげた。
「一回は踊らないと、失礼に当たります」
ディアナもリカルダの言葉に賛成を示して、大きくうなづく。そのあと、リカルダもフィーネも自分が運営している孤児院であずかることになるから会いにくくなることと、リカルダは貴族として最後の夜会になるのだから姫様の踊っている姿を見せてあげてくださいと告げた。
「しかし、わたしは踊ったことがないし」
ちいさくなりながらマリアが言うと、無骨な手がすっと差し出される。
「よろしければ、わたくしのお相手を願えますか。姫様」
言葉を紡いで頭を垂れているのは、レイヴァンであった。たしかに、レイヴァン相手であれば気を遣わなくても良いと思い、その手をとった。
最初のコメントを投稿しよう!