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見慣れない自分の姿にとまどいが消えないまま、正騎士長となって新しく与えられていた部屋をあとにした。
正騎士だったときよりも、この部屋はマリアの部屋が近い。それは嬉しいことであるが、レイヴァンにとっておちつかないことがある。正騎士と同様に個人に部屋を割り当てられているのはかわらないが、今までの部屋よりもうんと広く、豪華なかざりがたくさん施されていることだ。ベッドひとつとっても、赤と金の天蓋カーテンがついているし、壁には真っ赤な壁紙が張り巡らされ、床は天井にぶらさがったシャンデリアを反射するほどうつくしい。
離宮から王城へと戻ってきてから部屋に割り当てられたときもそうだが、もどるたびに自分には身に余るとレイヴァンは思ってしまうのだった。
「おやおや、いかがなさいました? 正騎士長殿」
おどけた口調で声をかけてきたのは、正装に身を包んだソロモンである。口元には意味ありげな笑みが浮かんでいる。
「どうもしない」
つめたく返したけれど、気にもとめていないらしくソロモンはレイヴァンの肩に腕を乗せた。
「そうには見えませんでしたぞ。無意識ですか、ふかぁい溜息が零れてましたぞ?」
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