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聞いておどろく。溜息をこぼしたつもりなど、本当になかったからだ。
「正騎士長という任はそれほど重いのですか。それとも、姫様と婚姻を結びたいという話を陛下にいうことができなかったからですか」
ソロモンの言うことも一理あった。国に戻ってきた後、国王から「何でもほしいものを言って欲しい」と言っておきながらレイヴァンが言い終わる前に倒れていらい、レイヴァンは仕事が増えて、まだ言えてなかったのだ。
「いや……」
言葉が出てこず逡巡していると、チュールを何枚も重ねられたライトブルーのドレスをまとった少女がこちらの姿をみつけて駆けてきた。
「レイヴァン!」
半年前に比べれば、ずいぶんと伸びた薄い金の髪をなびかせて青い金剛石の瞳をうれしげに細め、明るい声を響かせていた。けれど、驚きの声に変わり、まだ慣れないヒールに足をもつれさせ、顔面が床とぶつかろうかというとき、体をすかさずレイヴァンが支え、ことなきを得た。
「大丈夫ですか、マリア様」
「ありがとう、レイヴァン」
少女――マリアは、照れた表情で笑い礼をいった。すると、ピナフォアを振り乱しながらビアンカが駆け寄ってきた。
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