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「姫様、大丈夫ですか。だから、走らないよう申しましたのに」
すっかり、メイドが板に付いたビアンカが言えば、マリアは「ごめん」と言いつつレイヴァンから離れる。名残惜しげにレイヴァンが思っていると、背後でソロモンが咳払いした。
「姫様、自重してくださいね。それにしても、ビアンカはずいぶんと見違えましたね」
数日前にマリアが女性だと知らせたとき、まったく動揺を見せなかったことを思い出しながら、ソロモンが告げればビアンカは頬を赤らめつつ「いいえ」とかえす。
「とんでもございません。わたしなんて、まだまだです」
「謙遜しなくてもよろしいですよ、本当のことですから」
わざとらしくビアンカにいい、マリアとレイヴァンを見て深い息を吐いた。
「本当に進歩がない」
「おい」
ソロモンの言葉にレイヴァンがことさら低い声でいうと、ソロモンは肩をすくめてみせて話をそらし「夜会の会場へ向かいましょう」と言ったのだった。
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