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公爵であるソロモンに手を引かれながらマリアは、会場へつくとすでに名前も知らぬ貴族達が上品な声をひびかせていた。いくつもある机上には、豪勢な食事が置かれ、給仕が軽妙な動きで貴族に葡萄酒や三変酒といったお酒を運んだり注いだりしている。
はじめて出席する夜会にマリアが会場を見回していると、壇上に上がっていた国王オーガストが声を張って告げた。
「いま、会場にファーレンハイト公爵にエスコートされて来ましたのがわたしの娘、クリストファー……否、マリア・アイドクレーズです」
国王がソロモンをラストネームで呼び、マリアを本来の名に訂正して言えば、貴族達が言葉をかわしあう。どのような言葉であるか、マリアには聞こえぬがどうも居心地の悪さを感じ、ソロモンにエスコートされながらうつむいていれば、ソロモンが出来るだけ柔らかく微笑んでくれた。
「あなたは堂々としていればよろしいのですよ、お姫様」
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