序章

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 甲高い声がいっそう、つよく会場にひびいた。けれど、マリアは困惑してしまいそんな声も耳に入っていなかった。むろん、後ろでレイヴァンが不機嫌そうにしていたことなど知るよしもない。  玉座の前まで来ると、ソロモンは優雅にマリアから離れ後ろで跪く。国王は、玉座から降りるとマリアが女性であることを告げ、いままで男だと言ってきたことを謝罪した。形の上だけでも貴族達は納得を示して拍手が会場を満たす。やがて、音が止むとマリアを正当な王位継承者として認めることを宣言し、臣下に“あるもの”を持ってくるよう命じた。  少し経って、臣下がもどってきたが、臣下は冷や汗を浮かべて国王に耳打ちする。臣下の言葉を聞いていくうちに、国王はあおざめていった。 「なんだって」  何かあったのだろうかとマリアが見つめていると、国王がしばし悩んだ後、マリアに壇上へあがるようにいい、玉座のとなりにある椅子に座るよう言われた。レイヴァンとソロモンはいぶかしげな表情をうかべたまま、マリアの後ろに控える。貴族達も、なんだかおちつかないようすでさわがしい。
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