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思わず溜息を吐けば、レイヴァンが「陛下、姫様はおつかれのようです。すこし休まれませんか」と進言すれば、国王は受け入れマリア達に席を立つよう言ってくれた。レイヴァンに深く感謝しつつ、マリアはふたりに促されるまま会場をあとにした。
「ありがとう、ふたりとも」
月のかおりがただよう中庭が近い廊下へ出て、マリアは気の抜けた笑みを浮かべて二人に告げた。けれど、ふたりの双眸はけわしげに揺れる。
「マリア様、少しお時間いただいてもよろしいですか」
レイヴァンの言葉に何かあったのだろうかと考え頷くと、漆黒のマントがゆれてマリアを横抱きにした。
「申し訳ございません、その靴では歩きづらいと思いまして」
おどろいたが「かまわない」と答えると、レイヴァンはちいさく微笑むだけにとどめ夜の気配が満ちた廊下を駆けていった。
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