あめよ ふれ

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ママが出ていってから、もう1度てるてる坊主を見る。 すーっと垂らされる糸につながれるというよりは、縛られている。沙耶ちゃんの太いヘアゴムで。 無理やりにしたせいか、格好がさかさまになっていて、ナナメにもなっていて、笑った顔がもっと笑ってるかのように見えた。ちょっと可笑しく見えちゃう。 「ね、ほんとに雨が降るかな?」 「降るよ! 絶対! 私が作ったやつも隣にかけておくね」 そう言って、沙耶ちゃんはもう片方のヘアゴムを外した。髪の毛がするんと落ちて沙耶ちゃんのいつもの雰囲気が変わる。 ふたつ並んださかさまのてるてる坊主さんは、やっぱりまっすぐじゃなくてナナメになっている。これでいいかな? 大丈夫かな? これで雨が降ったらいいな。 雨よふれ。たくさんふってほしい。 そしたら私のお気に入りの傘で、お出かけするんだ。誰かのお迎えにも行くからね。 下の階で手を洗うと、わたしと沙耶ちゃんはドーナツにかぶりついた。甘くてサクサクとしたお砂糖のかたまりが、ほんわりと口の中でとけていった。 [完]
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