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「どうだった? 美桜ちゃん」
お部屋から飛び出した私を待ち構えて、沙耶ちゃんが心配そうな声を出す。
「大丈夫。気づかれてない。でもおやつを持ってくるって! どうしよう」
「早く作らなきゃ!」
出来るかな?
「まずはティッシュを3枚くらいとって、」
「うん」
沙耶ちゃんは手先がとても器用だ。わたしも負けじと3枚のティッシュを出す。
「2枚だけ先に手でこねるの。まるまるにして、その時心のなかで雨が降ってくださいっていうんだよ?」
「うん!」
2枚のティッシュをこねこねして、「どうか、かみさま雨を降らせてくださいって」お願いした。その時「おー、いいぞ。よしよし」って声が聞こえたような気がした。
「で、最後の1枚をこうやって作った丸にかぶせるの。ね。ほら。これだけでもうてるてる坊主さんでしょ?」
「ほんとだ!」
1枚のベールをフワリとかぶせて沙耶ちゃんの言う通りに首にゴムを引っかけるとあっという間に出来上がった。
「ね、ちゃんと心のなかでお願いした?」
「したよ! これでいい?」
「うん! あとは目と口を書くの」
わたしは黒のペンをとりだすと、キャップを外した。
「かわいくね」
「かわいくね。かわいく書くよ」
手がプルプル震える。
ちょんちょん、と目を書くと、わたしとにらめっこをする。こちらを向いてるみたいに書けたかな。少し目と目が離れちゃったかな。
わたしは赤いペンを取り出した。ほっぺたを書かないといけないから。
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