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浩介は、街の進学塾で知り合った女の子と付き合っていた。街に住む彼女とイベントに行きたくて、夕方こっそり出かけてしまったのではないだろうか?
「浩介だけ応答がないよ。浩介、街に彼女がいるから、もしかしたら出かけちゃったかも!」
僕が言うと、父が「浩介ってどこの子だ?」と聞くので、名前とだいたいの住所を話す。
すぐに父は集落の名簿から浩介の家の電話番号を見つけ、電話をかける。
「もしもし、高萩と言います。お宅の息子さんの浩介君は家にいますか?」
単刀直入に父が聞くと、電話の向こうでは大騒ぎになったようだった。
父は少し話して電話を切ると、後ろで心配そうにしている僕達を振り向いて首を振った。
「浩介君のお父さんと話したが、子供部屋にいると思って見に行ったら、窓から抜け出していたらしい。外に出てしまった」
「え? どうなるの? 浩介、大丈夫なの?」
僕は父に聞く。
「今はどうしようもない。浩介君のお父さんが駐在さんに連絡すると言っていたが、多分、駐在さんも今夜は動けまい」
「え? どうして? 駐在さんって警察官だよね。パトカーだってあるし、警察が動けないってどういうことなの?」
「駐在だって人間だ。ハンゴンサマに会えば、どうなるかわからない」
祖父が言った。
僕は意味がわからなかった。
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