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びっくりして僕は父を見るが、「いいから、仏間に行こう」と言うので、父に従った。
何が起きたのか、心配しながら祖父を待った。
やがて祖父はハンゴンサマを玄関まで見送って、仏間にやって来た。顔が真っ青だった。
「どうしたんだ? 親父」
父が尋ねた。
「酒がいつもと違う、安い酒を飲ませるのかとお怒りだった」
僕はあっと思った。酒屋の店主が息子さんに代わっていた。上等な酒を持ってくるのを渋ったのではないだろうか。
「何もないといいけれど」
母が言った。
「いや、何もないわけはなかろう」
祖父が沈痛な面持ちで答えた。
次の朝、母の叫び声で僕は起こされた。慌てて両親の部屋へ行くと、父が眠っていて母がその体を泣きながらさすっていた。
父は、既に冷たくなっていた。
酒屋の息子も同じように亡くなっていたことを、あとで知った。
二人とも病死と診断されたが、そうではないことはわかっていた。
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