4. 掟

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4. 掟

 僕は中学三年生になった。  あれから毎年、夏休みのお盆を過ぎた頃の夜に、ハンゴンサマはやって来た。  毎回、挨拶に出されるが、まだ早いと言って誰もハンゴンサマについて説明してくれなかった。  でも、中学生ともなると、友達と夏休みの話からそのことが話題になることがあった。 「その夜は絶対外に出るなと言われてる」と、皆が口を揃えて言った。  これはこの集落にとって大切なことで、高萩(たかはぎ)家、つまり我が家が『大事なお役目を担っている』ということのようだった。  けれどもハンゴンサマが何者か、親から説明を受けたという友達はいなかった。  僕の中で、ハンゴンサマは地域に伝わる伝統行事――たとえて言うなら秋田の“なまはげ”――のようなものだと思うようになっていた。  中三の夏休み、僕の住む集落からバスで三十分の街で、夕方から若者向けのイベントが開かれることになっていた。  友達皆で行こうという話になったのだが、母に話したところ、それがハンゴンサマの日と重なることがわかった。
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