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ことりばこ
物の化け物で物の怪だ。
陰陽師は天文博士である。女は陰陽師になれない。なのではぐれ陰陽師となる。そのはぐれ陰陽師はひみつと名乗っていた。
珍しい物があるから見に来いとひみつは寺に呼ばれた。
「よく来たはいれ」
橘うたと名乗っている侍の真似事をしている娘がひみつを招き入れる。女侍らしくとどこで聞いたのか眉を短くしている。
「コトリバコだ」
うたは箱をひみつに見せた。秘密箱と呼ばれる開けるための仕掛けがある箱だ。鳳凰の絵が描いてある。うたは箱の側面を数度動かし箱を開ける。
「あら」
うたが驚く。
中には小猫が寝ていた。
「小鳥じゃなくてコネコバコになってるよ」
ひみつがけらけら笑う。
小猫がけふと小さくげっぷをした。
「どんな鳥がいた?」
「赤い小鳥だ今は猫の腹の中だが」
「箱貰っていいかい?」
ひみつがコトリバコの説明をすると持っていけと押し付けた。コトリバコが呪殺の道具で妊婦などに特に悪いなどと知らなかったのだろう。まあこの箱は小鳥箱なのだが。
「猫は?」
うたが聞くと。
「わしは行かぬ。ここで暮らすぞよろしくな」
と小猫が言った。そして箱から出て丸くなって寝てしまった。
「良かったな大事にしなよ。あと母上の清原様に宜しく」
ひみつはそう言うと箱を貰って帰った。
「なにその箱?」
一緒に暮らす狐のこん助が聞く。
「コトリバコだと思われていた箱だよ。正確には福の神を作る箱だ。清原様の娘から貰ったんだ」
ひみつは秘密箱に雛を三羽入れる。
「これに仙人香という仙人の修行した庵から作った香を入れる。するとこの雛達が一羽の赤い鳥になる。その鳥を餌に箱が何かを捕まえる。その何かが福の神となる。うたの前の持主は準備して渡してある所から間違いなく兄様だろうな」
ひみつは箱を閉じた。
一ヶ月が経ち箱を見に行くと、ひみつとこん助は青い鳥を見た。箱はどこにも見当たらない。
「青い鳳凰か」
ひみつがそう言うと、鳳凰は飛んでいった。
「この国をよろしく」
ひみつは飛んでいく鳳凰に言った。
青く美しい羽が舞っていた。
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