赤と白 第二章 1

6/28
前へ
/28ページ
次へ
「その薔薇とかすみ草は、裏門司の山で、沙月のご両親が栽培していたみたいで、私と茜は二年後に沙月の家を訪ねたわ。  そして、沙月が七年前に交通事故で亡くなっていた事に気付いたの。」 「確かに沙月の家で、薔薇やかすみ草を栽培していた。  沙月はご両親と一緒に栽培を手伝って、私にもいろいろ教えてくれた。  だから今、ネパールのガーラ村でも沢山の薔薇やかすみ草も栽培してるんですよ。  明日でも良ければ、山に登ってみませんか?  あっ……すみません。  話が脱線して……  沙月は二人に対して違う性格で接していたんですね……  茜さんの場合は男ぽく、若菜さんの場合は女らしく。  自分の知ってる沙月は両面を持ってました。  時には男らしく私を怒り、時には女らしく私を慰めたり、そんな沙月が大好きでした。  しかし、不思議な話だ。  先程の演劇と話が似てる気がする。」 「あれはジミー・ブラウンの脚本で、最初に聞いた時はビックリしたわ。  私も茜も。」 「じゃ、その薔薇とかすみ草って今は?」 「私達、ブロードウェイの舞台で花の力を借りなくても、どうにか成長する事が出来た時、花は枯れてしまい今はドライフラワーで大事にしてるんです。」 「二人はブロードウェイに出たの?  しかし、あの演技で……?」 「渡辺さん、かなり失礼ですね!」 「あっ……  若菜さん、ごめんなさい」   「不思議な話だ。  沙月は二人の心に残っていたのか……」  若菜は最後に言った。 「いやっ……  まだ、私達の中に沙月は居るわ。  だって、今日の舞台、私達より沙月の方が動揺してたかも知れない。」 「なるほど……」 「あれは、二人の実力じゃなかったって事?」 「当たり前でしょ。」 「茜さん、ごめんなさい。」   「お前達、何時だと思ってるんだ!  渡辺君、さっさと帰ってくれ!」 「すみません。  遅くなりまして!  では明日、宜しければ私の花畑にお越し下さい。  お邪魔しました。」  
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加