【今日も今日とて】

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銭湯で疲れを癒した私たちは、近くのコンビニに立ち寄った後、彼の家へと戻った。頬を撫でる夜風が心地よい。時刻は、12時を回っていた。 道中で買った生八ツ橋と共に、促酔剤を服用した私たちは、悠然と話に耽る。かなり弱い上に辛口が苦手にも関わらず、私は無理して大人を振る舞う。大学での勉学やサークル、恋愛などについて語り合う。彼の趣味は音楽で、高校の文化祭では、ドラムを叩く姿から彼の熱い想いが伝わってきた。そして大学ではバンドサークルに入り、積極的に活動しているらしい。彼の演奏が回顧され、感傷に浸る。再び聴きたいと思った。気づけば3時半近くになり、就寝の準備を始めるが、私は無理がたたり濁った渦の中で苦しむ。ベッドに横になったものの、一向にその勢いは止まない。 約30分苦しんだ後、ようやっと眠りに着いたが、4時間程で淡い吐き気に襲われて起きる。吐くことは無かったものの、その苦しみは1時間ぐらい続いた。どうやらまだ大人にはほど遠いらしい。 私は疲労が顔に現れ、老け込んでいた。こういう意味で大人になりたかったのでは無い。 しばらくして彼も起きる。2日目は完全にノープランであった。しかしこれは、計画的なノープランである。つまり、こうなることを予測していたのだ。1日目に遊び、2日目は疲れも溜まるだろうからゆったり過ごす。これを考えた過去の私たちに心の中で賛辞を送る。 しかしせっかくの京都。ただ家にいるのでは味気ない。そして私たちは、彼の大学で学食を食べてから下流の鴨川沿いを散歩することを決め、今に至る。 此度の旅路は予想外の出来事が起こりかなり焦ったが、今思い返せば、非常に忘れ難い面白い思い出へと昇華している。きっと、この精神があれば、今後辛いことがあっても、いい思い出話になると信じて頑張り切ることができるだろう。 私の中の淀みが薄れて、少しだけ心が澄んでいくのを感じる。清流がゆっくりと優しく、穏やかに流れてゆく。 私は、河川敷に響き渡る彼のラッパの音色に耳を傾けながら、京の流れに、そして、今日の流れに身を任せる。今日も今日とて、京も京都て、川は流れゆく。 そして、ゆっくりと瞳を開く。  〜完〜 お読みいただきありがとうございます! よければ感想など、お気軽にコメントください!
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