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最後の答え
俺は姉ちゃんに連絡して、恋夏に土曜日近所のレストランに来てほしいと伝えてもらった。改めて揃えた品々を前に緊張しながら恋夏が来るのを待つ。
店員さんに案内されて恋夏がやって来た。会うのは実に10日ぶりだ。
「久しぶり」
「久しぶりだね」
たどたどしさを抱えながら恋夏が向かいに座る。
「恋夏、本当に申し訳無かった。仕事がうまく行って天狗になって、恋夏を傷つけた。恋夏がいたから仕事も頑張れたのに、全て自分の力だと思いこんでた。俺、恋夏を失いたくない」
恋夏は無表情のまま口を開いた。
「私のために用意してくれたもの、見せてくれる?」
俺は目の前に準備したものを並べた。恋夏に対してここまで緊張するのは初めてだった。
「前に恋夏が飲んでたハーブティーが無くなって、いろんなお茶飲み比べてたよな。最後の2択になった時、俺が気に入ったこのルイボスティーを選んでくれた。
チョコレートは、近所にできた専門店のもの。普段はホワイトチョコを食べるけど、この店のチョコはカカオの風味が良いからミルクチョコを好んでた。中でも、俺が好きだった生チョコをよく買ってたよな」
恋夏の表情は幾分柔らいでいる気がする。……いや、それは俺の願望でしか無いのかもしれないけど。
「それと、俺の誕生日は俺のせいで冷めたピザを温め直してくれて食べたけど、恋夏の誕生日は店で祝いたいって言ったら、平日は無理だろうから日を改めてでもいいって言ってたよな。恋夏はいつも忙しい俺のことを優先してくれたのに、俺はそれに甘えてばかりで恋夏とちゃんと向き合ってなかった。本当にごめん」
俺は恋夏に頭を下げた。恋夏が納得できる答えだっただろうか。俺はひたすら祈った。
「私の想いは届いていたっぽいね。ちゃんと考え直してくれてありがとう」
想いは通じたか。このタイミングで店員さんがケーキを持ってきた。横にメッセージカードが添えられている。
恋夏 お誕生日おめでとう
これからもよろしく
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