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Letter1
今夜悠馬のした過ちは簡単には許せない
前から言ってるよね、大事なのは最初と最後だって
だから私のお願いを聞いて。本気で考えてよ
誰もいない部屋に帰った俺に待ち受けていたのは、可愛い便箋に書かれた3行の手紙だった。
俺のした過ち、それについては心当たりはある。だからこうして、お詫びの意味も込めて恋夏の好きなプリンを買って帰ったのだ。
最初と最後か……恋夏はよく言ってた。人と初めて会った時、第一印象が関係構築の重要な要素だし、別れ方が最悪だとずっと後悔が残ると。俺との別れを示唆しているのだろうか。
だけど、お願いってなんだ? 手紙には他に何も書いていない。裏を見ても、透かしても何も見つからない。
でも『許せない』ということは、あの会話を全部聞かれていたのだろう。俺は、あの時の言動を心から後悔していた。
***
今日の俺は上機嫌だった。半年かけてリーダーとして頑張ってきたプロジェクトが無事成功を収め、高く評価された。今日は打ち上げと称してプロジェクトメンバーで会社近くの居酒屋に集まっていた。
「ほんと、今回真田さんのおかげでめっちゃいい仕事出来ました。俺、一生付いていきます!」
「分かった分かった。大げさなんだよ」
後輩の村本から言われる言葉に俺はいい気分になりながら酒を飲んでいた。
「そう言えば、真田さんて彼女とかいるんすか?」
「ん、まあ、一応な」
俺の返しに、村本は少し残念そうにしていた。
「そっすか。いや、遊川さんとお似合いだなと思ったんで」
遊川さんは1年先輩の女性で、今回のプロジェクトで常に俺を支え続けてくれた。彼女がいなけれはここまでの結果は残せなかったと言っても過言ではない。
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